はじめに -プロローグ-

よくある誤解に、幼稚園は「教育」をするところ、保育所は「遊んでいるだけ」とか、「子守り」というものがあります。

ここには2つの誤解があります。

1. 保育所に「教育」がないということ。

2. 小学校以降の「教育」と幼稚園・保育所での「教育」を混同してしまっている。

 

保育所に「教育」がないという誤解についてですが、正しくは、保育所は「養護と教育」を行うところであり、幼稚園は「教育」を行うところであるということです。つまり、保育所に「教育」はあります。

このように書くと、それでは幼稚園には、「養護」というものがないのかという誤解を受けるのですが、幼稚園にも当然「養護」はあります。わざわざ「幼稚園教育要領」に「養護」という書き方をしていないだけです。それは逆にいうと保育所では「養護」ということがどれだけ重要かということを示しているわけです。保育所は「養護と教育」であり、「教育と養護」という順番ではないというところにも大切な意味があります。

 

では、「養護」とはいったいどういうことなの?についてですが、「養護」とは、

1.生命の保持

2.情緒の安定

ということだと書かれています。

「保育指針」には「生命の保持」と「情緒の安定」についてそれぞれ詳しく述べられていますが、私は、これを分かりやすく本園の先生方に説明する際に「子どもが安全な環境のなかで先生たちに受け入れられ、どれだけ安心して幸せに過ごせているか」という言い方をしています。

 

保育所は、保護者が働いていることが前提となっています。幼稚園は3歳からですが、保育所は0歳からです。幼稚園は4時間が基本ですが、保育所は11時間開所が基本です。

年間の登園日数も100日ちかく幼稚園の方がすくない。

つまり、幼稚園児と比較すると保育所園児はどうしても親子・家庭で過ごす時間が少なくなるということです。

だからこそ、保育所では「養護」という面が幼稚園より強調され意識されているということです。情緒の安定なくして、教育はできませんから。

保育所に教育がないといった誤解がなぜあるのかを推測すると、幼稚園は文部科学省の管轄だが、保育所は厚生労働省の管轄であるといった辺りからなのだろうかと思ったりもするのですが、はっきりしたことは分かりません。

たしかに、保育所は、幼稚園のように夏休みや冬休みがありませんし、朝7時から晩7時まで子どもがいるなかで、翌日の保育の準備等をしなければなりませんから、幼稚園のように保育の準備や保育の勉強に十分な時間が取りにくいというのは事実です。

現場の感覚からいえば、保育所は、教育を含む子どもの生活全体をまるごと対象とするところであり、幼稚園については、子どもの生活の一部分のみを対象としている施設であるという印象を持っています。

 

誤解の2つ目、「教育」ということについてですが、「教育」というと、知識を教えること、お勉強することだと一般には思われています。ですから小学校・中学校の教育関係者と話をしても、小学校教育を先取りして、ひらがなやカタカナ、足し算や引き算を教えること、英会話やそろばん、習字などを取り入れることを教育的だと勘違いされていることがほとんどです。小学校以前の保育所・幼稚園の幼児教育と小学校以降の教育は、教育方法が異なっている。小学校以降の教育方法と違っている事に大切な意味があるのですが、このことが案外知られていません。

 

つづく・・・

 

次回は、

小学校以降の教育と保育所幼稚園の教育はどう違うのか?

なぜ違うのか?について述べてみたいと思います。